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慌てて言い返すと床に座り込んだ零士先生がまた笑い出し、苦しそうにヒィーヒィー言ってる。
「バカなヤツ。社員にセックスを強要するなんて有り得ないだろ?」
有り得ないことだから困ってたんじゃないってムッとしていたら、やっと笑うのをやめた零士先生がキャンバスを指差して呆れたように言う。
「この部屋を見れば分かるだろ? モデルだよ。モ・デ・ル」
「へっ? モデル?」
「あぁ、お前は、俺が仕事で都合がつかない時以外は必ずここに来てモデルをする。つまり、絵が完成するまでの間、お前のプライベートの時間を俺が買い取るってことだ。それで百万円を返済できるんだから悪い話しじゃないだろ?」
確かに、エッチに比べれば全然アリだ。だけど……ちょっと待って。この展開って、もしかして……
十年前の約束が思い出され大きく目を見開くと、おもむろに立ち上がった零士先生が妖艶な瞳で微笑み、長い指で私の髪をすく。
「この綺麗な黒髪に透き通るような白い肌。そして何より、澄んだ大きな瞳。イメージにピッタリだ……」
「あ……」
甘い声で褒められドキッとするも、その台詞が十年前とほぼ同じということに気付き、激しく動揺する。
やっぱり、ヌードなのかな? まさかあの時の約束がこんな形で果たされることになるとは……
当時は十年も経てば私だって色気ムンムンのいい女になっていると思っていたけど、実際は微妙だ。ハッキリ言って自分の体に全く自信がない。だから改めて零士先生の前で裸体を晒すのかと思うと羞恥で体が固まる。
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