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「表情は憂鬱で切ない感じで……気怠さを出したいからスカートを膝まで捲り上げて足を投げ出してみてくれ」
「憂鬱で切ない? 笑顔じゃないんですか?」
普通に考えれば、結婚式は女性にとって人生最大の幸せなイベント。なのに憂鬱で切ないって、どういうことなんだろう?
不思議に思い理由を聞くと……
「結婚が全ての女性にとって幸せとは限らないだろ? 他に好きな男がいるのに、別の男と結婚しなければならなくなった……としたら、その花嫁は憂鬱じゃないか?」
「確かに、それはかなり憂鬱ですね」
「分かったら言う通りにしろ。まぁそうだな。恋愛経験の乏しいお前には難しいかもしれないから、新太に振られた時のことでも考えてろ」
「なっ、私は新太さんに振られたんじゃありません! 私の方が振ったんです!」
零士先生は「失恋したことに変わりはないんだから、そんなのどっちでもいいだろ」なんて面倒くさそうに言うけど、それは違う。私の中では絶対に譲れない重要なポイントだ。振ったのと振られたのでは天と地の差があるもの。
そして零士先生の口から新太さんの名前が出たことで、輝樹君が言ってたことを思い出す。
「あ、そう言えば、常務は新太さんと同じ大学で同級生だったそうですね? 親しかったのですか?」
パーティー会場では険悪な雰囲気だったが、お互い下の名前で呼び合っていたし、学生時代は仲が良かったのかと思ったのだけど、その質問に零士先生が激しく反応した。
「親しい? 冗談じゃない。俺はアイツが大嫌いだ!」
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