甘美な視線

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「誰が見ていいと言った?」 「あ、でも、見るなとは言われていませんでしたから……」 怒鳴られたことに納得できなかったから、嫌味混じりに屁理屈的な反論をしてしまったのだが、それが彼の神経を逆撫でしてしまったようで「完成するまで覗き見禁止だ!」って凄い形相で睨まれる。 なんなのよ。そんなに怒ること? なら、初めからそう言ってよね。 散々待たされたあげく、こんな些細なことで怒鳴られるなんて納得できない。だからあからさまに不機嫌な顔をしてソファーにドカリと腰を下ろした。 すると舌打ちをした零士先生が近付いて来たので、何かされるんじゃないかと身構えたのだけど、予想に反して彼はそのままの背後にまわり、前と同じように私の髪を束ね始める。 「本当にお前は生意気なヤツだな。昔は素直で可愛かったのに……」 「えっ……?」 昔って……零士先生は、私が絵画教室の生徒だって気付いていたの? まさか……嘘でしょ? 今までそんな素振り全く見せなかったのに…… 凄い勢いで振り返り零士先生の顔をマジマジと見つめるも、すぐに頭を両手で掴まれ、無理やり前を向かされてしまった。そして何事もなかったようにまた私の髪を手ぐしで整えている。 暫くの間、瞬きするのも忘れて放心していたが、気を取り直し、いつ私だと気付いたのか聞いてみた。 「んっ? 気付いたのは、社長室で初めて会った時だ。すぐにお前だって分かったよ」 「はぁ? じゃあ、初めっから気付いてたのに、知らんふりしてたってこと?」
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