甘美な視線

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再び振り返り大声を張り上げたのだけど、彼は表情を変えること事無くサラッと言う。 「なんだ。お前も気付いていたのか? 何も言わないから忘れているんだと思ってたよ」 「忘れるワケない……零士先生こそ、私のことなんて覚えてないと思ってた」 俯き気味にボソリと呟くと「零士先生か……懐かしい呼び名だな」ってフッと笑い、私の頭をポンと叩く。 「俺が初めて描きたいと思ったヤツのこと、忘れるはずがない」 「えっ……じゃあ、あの時、モデルになってくれって言ったのは、冗談じゃなくて……本気だったってことですか?」 「本気に決まってるだろ? あの頃のお前はまるで人形のように可愛くて本気で描きたいと思った。でもな、俺はあの後、パリに短期留学することが決まっていたからな……」 留学……? あ、そうか、だから美大をまわって零士先生を捜しても見つからなかったんだ…… けれど、零士先生が覚えてくれていて、本気で私を描きたいと思っていたことが分かり、心の底から嬉しかった。 でも、あのことは…… 「えっと……一応、確認なんですが……その~ヌードモデルっていうのも……本気だったんですか?」 すると「ヌードか……」と言った零士先生が突然後ろから私をフワリと抱き締め低い声で囁く。 「……脱いでくれるか?」 「ひぃっ……それは、無理です」 「なんで? もう立派な大人だろ?」 肌に直接触れた彼の手の温もりと甘い声に心臓が破裂しそうなくらいドキドキして一気に体が火照る。
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