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もし私と零士先生の間に何かあったら、それは間違いなく薫さんへの裏切り行為。
そう思ったら、彼に抱き締められ、戸惑いながらも胸を高鳴らせている自分が許せなくて……そして悪びれる様子もなくシラッと私を口説いている零士先生に怒りを覚えた。
「……放して」
「んっ?」
「薫さんがいるのに、どうして私にそんなこと言うんですか?」
「はぁ? なんで薫が出てくるんだ?」
すっとぼけるなんて信じられない。こっちが"はぁ?"って言いたいよ!
肩にまわされた腕を乱暴に振り払い後ろを向くと、ソファーに膝を立てて零士先生を見上げた。
「薫さんは、零士先生の彼女ですよね? それなのに私の処女を貰ってやるとか……ふざけないで!」
怒鳴って睨み付けるも、彼は特に焦っている風でもなく不思議そうな顔で首を傾げている。だから益々腹が立ち「最低!」と叫んで零士先生の胸を両手で思いっきり突いた。だが、反対にその手を掴まれ自由を奪われる。
「バーカ! 俺と薫はそういう関係じゃない」
「嘘付かないで! ふたりを見てれば分かります。零士先生にとって薫さんは特別な存在。それは薫さんも同じ。ただの幼馴染みなんかじゃないはず」
この期に及んでまだ白を切る零士先生に冷めた視線を向けると彼は私の手を離し、小さなため息を付いた。
「確かに、俺にとって薫は特別な存在だが、お前が思っているような仲じゃない。俺と薫は、そうだな……性別を超えた真の親友。同士ってとこか……」
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