悪魔っぽい!

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 川西先生は大学院を卒業したばかりの数学の非常勤講師で、その学歴に加え、端正な顔立ちとモデルのような立ち居振る舞いで女子生徒から大人気の先生だ。  菜摘も入学当初から憧れていたが、一度放課後に数学の質問に行ったとき、とても優しく教えてくれたことでさらに好きという気持ちが高まった。 「分からないところがあるというのは、授業のやり方が悪かったんだな。これからもっと工夫するよ。質問に来てくれてありがとう。嬉しいよ。また分からないことがあったら、いつでも聞きに来てくれ」  菜摘は中学時代いじめを受けていて、高校は越境して誰も知り合いのいない高校に入った。高校ではいじめはなかったが、人見知りをする性格ゆえに親友と呼べるほど親しい友達もできず、そんな自分にこんなに優しい言葉をかけてくれたのは川西先生が初めてだった。結局質問に行けたのは今のところそれが最初で最後であるが……。 「なるほど。その言葉で川西先生のことが好きになったんですね」 「『質問に来てくれてありがとう』なんて初めて言われたし、いつでも聞きに行っていいんだっていう優しい包容力みたいなのを感じて……」  こんなことを話せる友人もいないのに、どうして私はこの男に話しているんだろう。ぼんやりと菜摘は思った。  この人は自分のことを悪魔だと言い、菜摘しか知らないはずのことまで知っていた。まさか本当に悪魔なんだろうか。だが穏やかな雰囲気は悪魔などのイメージとは全く違い、全てを受け入れてくれるような話しやすさがあった。 「本当に川西先生が私を好きになってくれるようにできるんですか?」 「もちろんです。ただし、その前に――」
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