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それから2日程過ぎて、見慣れないメールが届いていた。
烏龍茶さんからメッセージが…?
烏龍茶さん?
あ、思い出した。こないだの小説の作者さんが返事をくれたようだった。
仕事中だったので、帰宅してからまた思い出してメールを開いてみて驚いた。
期待を大きく上回る内容で返信してくれていた。
どこの誰だか解らぬ一読者に対する返事にしては丁寧過ぎて恐縮だった。
純粋に作品に対する愛情というか熱量を感じたし、さらに詳しく解説までしてくれていた。
「私などの御返事にあまり時間を割かなくて結構ですからね」
「それより先生、作品の執筆の方をどうかよろしくお願いします(笑)」
そんなメッセージをさらに送ったのだった。
その後あえて聞かなかったが、すぐに烏龍茶さんが女性であると確信した。
物語の主人公が男性であったが、男性心理が良く書けており私自身が共感出来る描写が多かった為に最初は騙されたようで少し悔しく思った。
もちろん読者としては物語が面白ければどうでもよい事なのだが。
いわゆる性描写は男性目線で書かれており、それでいて多数の女性キャラクターの個性的な表情は緻密かつ彩りがあり。
主人公の男性にまんまと感情移入してしまった為にまさか女性が書いていたとは…
そんな驚きもあって、作者の烏龍茶さんに対する興味が大きくなっていった。
そして数ヶ月間、お互いの仕事や生活についても雑談するようになり。
なにやら旧知の友人のような感覚になって行った。
その間、烏龍茶さんの作品は順調に更新されていき、もちろん読者としては大いに楽しませてもらい。
メッセージのやりとりも頻繁ではないにしろ続いていた。
お互いに他人だからこそ話せる事もあり、基本的に当人の日常生活に全く干渉しない関係というのも心地好く、勝手に好きな話題だけを並べた。
少なくとも私にとっては貴重な存在となりつつあった。
素直に尊敬の対象であった。
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