美沙子へ

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2017年、年が明けてから支店の雰囲気が変わってきていた。 どうしても家の事情で東北の田舎に帰る社員が1名いたが、もう1名こちらも実家の高齢になる母親を介護する為に田舎に帰る者が出た。 いずれも東北を拠点とするグループ社へ異動となってしまった。 2名の欠員は大きな痛手だった。 昨年の秋に1名補充人員があったが、60才を過ぎて定年を迎えてから顧問として迎えられた人であり、体力的に1名に数えられなかった。 もう1名こちらも60才を迎えて春に定年となり、顧問として残るおじさんがいたが収入が下がる為にしばらくグズグズ文句を言っているうちに辞めてしまった。 都合マイナス2.5名となった感じであった。 悪い事は重なり、30才になったばかりの社員が事故ばかり起こす為に免許を失効してしまった。 それに加えて50代の社員も身体的な事情により免許を失効した。 苦しい事に稼働人数で言えば3ヶ月ばかりの間に3名以上を失うという事態になってしまったのだった。 昨年度の成績を越えるどころか維持する事も難しい状態であろう。 さらに追い打ちをかけるように、もう1名の営業顧問がガン治療の為に入院となり… 目も当てられない程の窮地に陥った。 中間職である私ともう一人の30代半ばの社員に大きな負担がかかった。 冬場のうちはまだ良かったが、4月からは地獄のようなスケジュールとなった。 休日等も殆ど休めなかった。 開き直りの境地というような心境で日々の業務をこなしていたが、やはり無理が続けば心身共におかしくなってきていた。 6月半ばのある日に事件は起きた。 施工管理上あってはならないミスを私は犯した。 都内の店舗兼自宅として使われている施主の自宅の屋上の改修工事をしていたが、当日朝にスマホが故障していた私は集中豪雨の予報を知らずに簡単な養生をしただけで現場を離れて携帯ショップへ向かってしまった。 その夜から小雨が降っていた。 そして翌日の朝、まず元請会社の監督から呼び出され現場に向かううちにはもう取り止めもない豪雨となった。 豪雨の中、何とかしろと言われてもどうしようもなく… 3階建ての建物全体がすべて無惨にも水浸しとなった。 なんとか屋上全面をシートで囲い閉じる作業を終えると夕方になっていた。 ようやく雨が上がり、ずぶ濡れのままただただ力無く謝罪を続けたが許される訳もなく。 後はもうどうにでもしてくれという気分で帰宅したのだった。
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