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施工事故により施主の自宅とオフィスは水浸しとなり、翌日は元請会社の担当者とその上司、私は私の上司と現場に出向いた。
該当箇所の数百枚もの写真や動画を揃えるだけで半日かかった。
私はお詫びばかりしていても話は進まないので、昨日止まった作業を再開した。
なんでもこの建物は春に内装の全てをリフォーム工事したばかりらしく、再度そのリフォーム工事をやり直す方向で進めて欲しいというのが施主の言い分であった。
元請会社はとにかく全て施主側の要求を呑むという態度であったが、なかなか恐ろしい内容を含んでいた。
内装の張り替えでは済まず、天井や壁のボード全て交換。
濡れた建具や家財の交換費用、リフォーム工事の際の仮住まいはデザイナーズマンションに3ヶ月程住ませろとかキリがない要求が積み重なっていった。
もちろん多額の慰謝料も含んでいる。
施主側の知り合いの保険屋と建築屋が組んで出した見積もりが約4000万円。
もともと請けた工事金額は100万円弱であったのだが。
いっそ建て直しをすれば7000万円程度だろうか。
うちの社長は施工事故自体についてはさほど怒らなかったが、やはり施主側の要求に対して激昂してしまった。
部が悪いにせよ裁判で争うと言って簡単に交渉は決裂した。
私はその後一週間程、肩身の狭い思いで残工事を完了させた。
恐らくは問題は長期化する事が目に浮かぶ。
会社の役員達にはだいぶ迷惑をかけてしまったが、本社で顔を合わせる度に恐縮してしまう毎日には嫌気しか感じなくなってしまった。
疲れ果てた身体にこの事故の責任。
精神面もすっかり病んでしまったのだった。
結局は保険に頼る事になるとしても、自分自身の力が全く解決に及ばない事にひどく落胆した。
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