美沙子へ

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夏が過ぎて行った。 今年の東京の夏はとにかく連日雨ばかりだった。 私の気持ちもずっと晴れなかった。 仕事もプライベートも全く充実感がなかった。 仕事はただ最低限に必要と思う作業を淡々とやり過ごした。 休日も昨年から少しずつ始めたゴルフに誘われても断り、飲み会や旅行に誘われても乗り気がせず。 しばらく行かなくなっていたパチンコに行ってみたり無意味な時間ばかりを過ごした。 そう言えば多香子からの連絡も途切れていた。 彼女からは連絡が来ない方が良いと思う事にしていた。 何故なら彼女とは恋愛関係ではないし、やはりいつかは終わる不毛な関係が続いていただけだったからだ。 彼女の仕事が順調に行っていて生活に困る事がなければ、たいして好きでもない私のような男に金を貰って寝る必要もなく、ついでに彼氏でも出来て上手くやっていてくれる事が私の望みでもあったからであった。 私の方から連絡はする事はもうしない。 渇いた中年男の暮らしはそれでも続いて行く。 飢えないように仕事だけはする。 ハリのない毎日は心身を老化させて行く。 頬や横腹に余分なたるんだ肉が付いて行く。 頭髪にはちらほらと白髪が出てきている。 ある日鏡を見てゾッとする。 平均的な43歳とはこんなものだろうか? 私が生きている意味は果たしてあるのだろうか? 実家の母親に少々仕送りする程度しか思い浮かばない。 親戚に会うとやはり独り身でふらふらしている私を見る目は冷ややかであった。 どんなに容姿が優れず収入が少ない男でも家庭を持ち、奥さん子供を養って暮らす人生を送る方が素晴らしい事と思える。 人類生物として、種族保存の使命を全うしているとも言えるだろう。 私の持つ劣勢で怠惰な遺伝子は排除淘汰されるべきなのかも知れない。 ご先祖様には申し訳なく思う。 とりとめなくそんな事を考えては自身の運命を呪った。 全て自分流に生きてきた途中経過はひどいものであった。
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