美沙子へ

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烏龍茶さんこと美沙子のノンフィクション小説を読むうちに彼女が元気に回復して退院して欲しいと願う気持ちと過激な性描写を心配する気持ちが混ざり、この頃には彼女に対して恋心に近いものを抱いていたのだと思う。 そして何かが起こるのではないかと期待していた。 彼女から届いたメッセージはやはりその期待していた内容であった。 …密かに彼女とLINEのIDを交換する事となった。 しばらくオンラインのトークを楽しんでいたが、美沙子から本題が切り出された。 彼女は病室から電話をかけてきて言った。 「退屈だったの。エッチな会話してくれる?」 予想外の誘いではなかったので、私はそれに応える事にした。 いわゆるテレフォンセックスをした。 以前にもネットゲームで知り合った、ある人妻ともそういう行為をした事があった。 男は皆そうであるのか私は知らないが、私自身は卑猥な言葉や喘ぎ声でもの凄く興奮するかといえば、さほど興奮しない。 女性はいきなり実際に見ず知らずの男性と会うのは怖いし、まず二の足を踏むのはリスクを考えるからであろう。 電話口で一方的にアンアン喘ぎ、勝手に果てて満足してしまうような人妻であった。 その人妻とは何度か会う約束をしていたが、その約束は叶わなかった。 美沙子も自身の妄想と聴覚で高まり昇天出来るタイプのようであった。 しかし私はそうではなかった。 会って貰う為には努力して嘘をついた。 感じて高まり果てたフリをした。 美沙子からはその後頻繁にテレフォンセックスを求められて応じた。 好きだとか愛してるとか言って欲しいと乞われれば言った。 とりあえず実際に会ってセックスしてみたい為であった。 大変申し訳ないのだが、この時点での関係は恋愛とは言いにくい。 私の本心はただただ性欲を満たしたいのである。 10月半ばに美沙子は無事退院した。 11月の初めに会いに行くと約束した。 私が東京から彼女の住む奈良市まで出向く予定だった。
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