32人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
理想、だったのだ。
それも、とびきりの。
顔は特上。頭も特上。口は悪いが、気立ては良好。何でもできて、何でも話せる。
もともと、結婚願望などなかった。だが、この男となら結婚してもいいとまで思った。いや、この男としか結婚なんてしたくない。
しかし、今の友情関係も居心地がよくて、捨てがたくて。しばらくは様子を見て、タイミングをはかろうと思った。
それなのに。
あの日、キャンパスの一角で、同級生の一人を目で指して、あの男は彼女にこう囁いたのだ。
「俺さ……あの男が好きなんだよ……」
――仕事に生きよう。
少女のように恥じらう男の顔を見つめながら、彼女は心に誓った。
知り合ってから、わずか一ヶ月後のことだった――
最初のコメントを投稿しよう!