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*・゜゚・*・Prologue・*・゜゚・*
今も夢に見る凄惨な光景。それは鮮明に目に、鼻に、耳にこびり付いて今も取れないほどに。
「大丈夫か?また魘されていたようだが」
「……ええ。ごめん、またあの夢よ」
エマは乱れた髪とネグリジェを簡単に整える。汲んでいた水を飲みにベッドから起きた。
「最近は落ち着いていたのにな」
「そうかな。…そうかも」
水を一気に呷り、問いかけにどこか上の空な返事を返す。窓から差し込む月光が映し出すのはエマの影一つ。エマは影なき声に目を向ける。
「嫌な事の前触れだったりして」
自嘲気味に肩をすくめて笑うと、エマの隣で小さな光が一瞬大きく煌めいた。そこにはエマより背の高い男性が現れた。光を纏った彼はエマに優しく寄り添った。
「じゃあ俺が添い寝してやろうか?」
「ふふふ。そうね、ベッド小さいから、小さい姿のままがいいわ」
「あ、そんなつれないこと言うなよ。もっと詰めればっ、ほら、2人くらい余裕だ」
「うぅ、きついわ。…でもあったかい」
「だーろ?」
得意そうな顔で腕を差し出す栗毛色の彼に、しょうがないなと言いながらその腕に頭を預ける。少し狭苦しくなったベッドは優しい温もりでいっぱいに満たされていた。
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