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第14節「代役(バックアッパー)VS御曹司、誰のために」
「色んな強さがあると思うんだけどね。男の子としては、最初はここを通るよね。ユーミが、気になるんでしょ?」
祈に連れていかれた先は、県の武道館だった。道着を纏った祈と焔は、一礼して練習場に入る。
今日は武道館が一般に開かれている日で、ワンコインで自由稽古に参加できるのだという。
初心者から、中高生の経験者、県警の強い人達まで参加している場であるらしい。
焔達が訪れたのは一階の柔道のフロアで、既に近隣の学校の柔道部と思われる学生が目上の人間と練習できる貴重な機会だと、大人の達人たちに乱取りを挑んでいっている。
場には、気合の声が木霊している。
「柔らけぇ!」
まずは準備運動と自由に体をほぐしはじめたが、両足を左右に開くいわゆる「股わり」でお腹までペタっと畳につく祈に、焔は思わず声をあげた。
「数か月から半年くらい柔軟続ければ、わりとこれくらいにはなるよ」
さらっと語る祈をよそに、焔の方は。股わりも前よりできなくなっていたし、膝関節、肩関節、その他もろもろ、自分がイメージしていたよりも固くなっていた。
それは、日々に追われていたからでもあって。
(意識的に運動したのって、いつ以来だ?)
もしかしたら、「戦う」とか、それ以前の問題なのではないだろうか。
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