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特に良いと感じた箇所は、コメディな感じでキャラクター達の会話のやり取りが描かれる部分。
計算しているのか、素が出ているのか、焔としては、普段悠未が何気なく行っている灯理や祈との「かけ合い」の雰囲気が作品に反映されている気がした。
さらに気付いたこととしては。
(ヒロインの「妹」は、これ灯理さんだ)
キャラクターの設定とか外見とかは違っているのだけれど、会話のシーンのちょっとした機微が灯理に似ている。
そして、「妹」はとても大事に描写されていた。このキャラクターを通して、悠未にとって灯理が大切な存在なんだと分かってしまう。
焔は胸が高鳴ると。
「灯理さん。震災の時にアンタに助けられたって言ってた」
知りたいと思ってしまった。
できれば悠未よりも灯理を理解してあげたいのになんて衝動が湧き上がる。
「アレは、勘違いなんだ」
悠未はポツポツと語り始めた。
「灯理とは小学校が同じで、高学年の時には、朝に美術室で絵を描いてるいっこ下の女の子がいるのが気にかかってた」
「いっこ下? アレ? アンタも灯理さんも今高二だよな? 計算合わなくね?」
「ゆえあって、俺は学年を一つ留年ってる」
「マジで?」
焔としては意外な事実だったが、悠未は自分が留年している事実など気にもとめてないという風に、話を続けた。
「しばらくして、話をするような仲になった。朝に、あいつが筆やパレットを洗っている水場でが多かった。俺も、あいつと話したくてわざわざ早く学校に行ったり」
悠未は淡々と語っているが、焔としては。
(それって。もう、好きだったってことじゃん)
悠未と灯理の過去の話は、少しずつ大きい破綻の日に向かっていく。
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