第12節「悠未(ユーミ)の気持ち」

4/4
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/129ページ
 作品(きょこう)的な「笑い」だとしても、それに救われる人、救われてきた人はいるはずだ。  焔だってそうだ。  今、以前よりちょっとだけ笑うことができたり、胸に温かいものを感じるようになったのは、灯理のあのフワフワとした「スマイル」が、「お守り」のように自分の心に作用しているからだと思うから。  熱源。(ともしび)。アカリを、周囲に分け与えられる人達。  『街アカリ』という存在の源流に流れている生き方のようなもの。  一方で焔は、灯理の、そして悠未の心の深い所にある気持ちが理解できてしまうほど、ちょっと悔しくなってくる。  二人は心のカタチがとても似ていて、その魂を行動に変えて、既に実際に沢山の人々の手助けをしてきたのだ。それに比べて。  「五人」と、焔を人数に数えてくれたのは嬉しかったけれど。 (今の俺は、誰かを助けるどころか、自分のことでいっぱいいっぱいじゃないか)  心の硝子はひび割れていて。行動の炎は消えかけだ。  悠未にも灯理にも、全然並べていない。  そんな憧れと焦燥と自罰が、自分って存在の頭頂からつま先まで木霊する。  結果、焔の胸によぎった願いは、少年だったら誰でも抱く、ありふれた、一方でこれまでも何度も挫かれた、おそらくこれからも何度も挫かれるであろう、純真なソレだった。  つまり。 ――ああ、強く、なりたいな。
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!