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作品的な「笑い」だとしても、それに救われる人、救われてきた人はいるはずだ。
焔だってそうだ。
今、以前よりちょっとだけ笑うことができたり、胸に温かいものを感じるようになったのは、灯理のあのフワフワとした「スマイル」が、「お守り」のように自分の心に作用しているからだと思うから。
熱源。灯。アカリを、周囲に分け与えられる人達。
『街アカリ』という存在の源流に流れている生き方のようなもの。
一方で焔は、灯理の、そして悠未の心の深い所にある気持ちが理解できてしまうほど、ちょっと悔しくなってくる。
二人は心のカタチがとても似ていて、その魂を行動に変えて、既に実際に沢山の人々の手助けをしてきたのだ。それに比べて。
「五人」と、焔を人数に数えてくれたのは嬉しかったけれど。
(今の俺は、誰かを助けるどころか、自分のことでいっぱいいっぱいじゃないか)
心の硝子はひび割れていて。行動の炎は消えかけだ。
悠未にも灯理にも、全然並べていない。
そんな憧れと焦燥と自罰が、自分って存在の頭頂からつま先まで木霊する。
結果、焔の胸によぎった願いは、少年だったら誰でも抱く、ありふれた、一方でこれまでも何度も挫かれた、おそらくこれからも何度も挫かれるであろう、純真なソレだった。
つまり。
――ああ、強く、なりたいな。
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