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「焔君、受身はOK?」
「小学校の体育でやった」
久々に、前回り受身をその場でやってみせる。こっちは、わりと昔のイメージ通りに体が動いた。
「うん。それなら最低限大丈夫かな。よし、まずは僕とやろうか」
祈は膝を落として、両腕を中段でちょっと広げる構えを取った。
「いきなり乱取りスか?」
「打ち込みをやろうにも、焔君、技の型自体持ってないでしょ。とりあえず、自分の最高のイメージで、向ってきてごらん」
焔としても、いきなり見ず知らずの相手に挑むよりは、祈と対峙する方が気安い。
「いくぜ」
焔は祈に掴みかかると、勢いに任せて大外刈りを仕掛けた。
「はい、ありがち」
祈の両足を刈ろうと足を振り上げた焔だったが、体と体がぶつかった直後、逆に祈の腰に乗せられてしまい、自分が宙に浮く形になってしまった。
そのまま、ゆっくりと払い腰の形で投げられる。そこには、受身が取りやすいようにという、祈の明らかな手加減も垣間見える。
「大外刈り。すごい力づくで倒しやすいイメージ持ってる人多いけど。相手を崩してからじゃないと、かからないからね」
その後も、「イメージとしては」知っている技を次々と仕掛けてみたが、ある時は足払いで、またある時は裏投げで、ことごとく返されてしまった。
「つ、強ええ」
これでも、祈は悠未には戦いでは敵わないという。ただ一方で、祈の強さの質は悠未とは少し違うようにも感じられた。
「『剛』と『柔』なら、『柔』って感じ」
率直に感想を伝えると。
「僕はパワータイプではないよね~」
祈は飄々と応えた。
「で、焔君は何タイプかって話さ。さて」
祈はちょうど次の乱取りの相手を探している様子だった女の子に声をかけた。どうやら、彼女が次の焔の相手となるらしい。
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