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(小学生くらいじゃないか)
今の焔の実力だと、このくらいの相手がふさわしいという祈の判断だろうか。
向かい合うと、女の子は丁寧に一礼した。
黒髪をサイドテールで束ねて、イキイキとした瞳をしている。
「っしゃ」
積極的なやる気を見せつつ、先ほどの祈との稽古から学んだ焔だったので。
(俺も返し技でいこう)
組み合った瞬間、俊敏に一本背負いの体勢に入る女の子に対して、焔はさっそく裏投げで返そうと、回転する女の子の体を抱きとめた。しかしである。
(あれ)
女の子の引き手が、焔が想定していたよりも強い。めっちゃ強い。裏投げの体勢に入って腰を落としていた焔ごと、持っていかれる。
やや強引ともいえる一本背負いをくらって盛大に一回転した焔は、かろうじて受身を取る。
そして、自分の作戦を反省する間もなく、女の子は投げから流れるような動作で、寝技に入ってきた。
なんとか、いわゆる「亀」の体勢になって防御を試みる焔であったが。
あっという間に襟を掴まれると、そのまま畳の上を女の子とゴロゴロと数回転。
気が付けば、襟締めの形で決められてしまっていた。
「ギブ。ギブッ」
女の子の腕をタップして降参を伝える。危うく、意識が遠のく所であった。
女の子は一礼すると、まだまだ力が余ってるといった風情で、次の乱取りの相手を探しに歩いていく。
「いやー、パワータイプの女の子だったね」
「小学生が絞め技使ってくるとは思わなかったっス」
一旦畳の外に出て、祈と並んで稽古中の人々を眺める。確かに、色んなタイプの人達がいる。
その中でも特に焔の目にとまったのは。
「なんだ、ありゃあ」
年のほどは三十代前半。身長は190センチほど。
道着の上からでも、鍛え抜かれた分厚い筋肉を纏っているのが分かる。
黒髪で短髪の美丈夫で、目つきは鋭い。
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