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貰った缶コーヒーの温かさが、徐々に体に染み入ってくる。
「僕はね。病気がちだったりして。ついこの前もアメリカまで行ってたりしてね」
焔はとまどった。
しばらくいなかったのは聞いていたけれど。祈に対して親しみを感じ始めていたが、込み入った事情を聞けるほどの関係性が彼との間にはまだなくて。
それでも、こんなにも近くで並んでベンチに座っていたりして。
「あ、心配しなくてイイよ。毎日お薬飲んだりね。定期的に通院したりね。それで、まあ生きていける感じ。ただ」
祈の態度は、既に受け入れていることを伝えているだけといった、自然なものだった。
「平均寿命まで生きられるかと言うと、だいぶ怪しい。というか、半分くらいかもしれない、とは言われている」
焔はこの国の同世代にしては「死」そのものを、「死」に近いものを見てきた方なので、極度に動揺はしなかったけれど。
それでも、改めて普段は当たり前のものだと思っている「生」が、限られていると意識されるのは重いことだった。
平均寿命の半分。全てを諦めるのには早いし、何かをやり切れるかと言ったら心もとない。
焔は、すぐには何も言えなかった。
「ハッハ。ますます、『スーパーヒーロー』にはちょっとなれなさそうな感じになってきたよね。薬漬けで、世界を救うとか言われてもねぇ」
微妙に、ここ笑うところだよというサインが出されていたが、受け取って笑うことはできなかった。
「そこで、だ」
しかし、祈はニっと笑うと。
「僕は、僕達は、か。『スーパーヒーロー』ではないなりのヒーロー像を追うことにしたんだ。いいかい、『ヒーロー』には三つのタイプがある」
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