第15節「この命儚いとしても」

2/3

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/129ページ
 貰った缶コーヒーの温かさが、徐々に体に染み入ってくる。 「僕はね。病気がちだったりして。ついこの前もアメリカまで行ってたりしてね」  焔はとまどった。  しばらくいなかったのは聞いていたけれど。祈に対して親しみを感じ始めていたが、込み入った事情を聞けるほどの関係性が彼との間にはまだなくて。  それでも、こんなにも近くで並んでベンチに座っていたりして。 「あ、心配しなくてイイよ。毎日お薬飲んだりね。定期的に通院したりね。それで、まあ生きていける感じ。ただ」  祈の態度は、既に受け入れていることを伝えているだけといった、自然なものだった。 「平均寿命まで生きられるかと言うと、だいぶ怪しい。というか、半分くらいかもしれない、とは言われている」  焔はこの国の同世代にしては「死」そのものを、「死」に近いものを見てきた方なので、極度に動揺はしなかったけれど。  それでも、改めて普段は当たり前のものだと思っている「生」が、限られていると意識されるのは重いことだった。  平均寿命の半分。全てを諦めるのには早いし、何かをやり切れるかと言ったら心もとない。  焔は、すぐには何も言えなかった。 「ハッハ。ますます、『スーパーヒーロー』にはちょっとなれなさそうな感じになってきたよね。薬漬けで、世界を救うとか言われてもねぇ」  微妙に、ここ笑うところだよというサインが出されていたが、受け取って笑うことはできなかった。 「そこで、だ」  しかし、祈はニっと笑うと。 「僕は、僕達は、か。『スーパーヒーロー』ではないなりのヒーロー像を追うことにしたんだ。いいかい、『ヒーロー』には三つのタイプがある」
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加