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「三つのタイプ?」
「一つ目は『スーパーヒーロー』。これはもう説明したね。まあ、これはぶっちゃけ僕らにはなれない。他に、二つ目の『真のヒーロー』と三つ目の『偽物のヒーロー』ってのがあるのさ。僕は、二つ目と三つ目の間くらいを目指してる」
「よく分からないっス」
「『真のヒーロー』と『偽物のヒーロー』がそれぞれ何者かは、あの日からこれまで、この街で生きてきたなら、たぶん焔君も、知ってるはずさ」
そこまで語り終えると、祈は立ち上がった。
「じゃ、今日は付き合ってくれてありがとう。楽しかったよ」
人差し指と中指を揃えてヒュっと空を切ると、祈は去って行った。
焔はベンチに座ったまま空を見上げて、今日も明滅している星明りを見上げた。
あの日凍えながら見上げた夜も輝いていた光を思い出して、変わったことと変わらないことに想いを馳せる。
変わったこと。例えば街はだいぶ復旧してきた。あの頃から日常を維持するために焔が見てきた大人達。
街角のパン屋さんや工事のおじさん。エトセトラ。そんな人達と、自分をバックアッパーだと語る祈の姿が重なる。
変わらないこと。それは例えば、焔にとって大事な人間。
回りに温かい人間が増えたから、思い出されることもある。
答えはすぐには出ない。強くなればその人も含めて全て守れる気もしていたけれど、祈の話を聞いていると、そう単純なことでもないらしい。
自分の気持ちをどう扱えばイイのか分からないまま、そろそろ自分にとって大事な事と向き合わなければならない時が近づいてきているのを、焔は感じ始めていた。
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