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「あうー。大きい声出すなよい」
少女は首を横にプルプルと振って、瞳をシパシパと瞬かせてから。
「ふぅ。愛情のゲージが回復した。生存圏内だ」
「ふざけてんのか、おまえ?」
「ふざけてない。愛が足りなくなると、目がチカチカする」
色んな意味で。
(警察に連絡した方がイイか?)
焔が判断に迷って目を泳がせていると。
「おまえ、カッコいいな。わたしと“いいこと”する?」
むしろ自分の方が窮地に陥っているのかもしれない。そんな見解に辿り着きかけた所で、助け舟が訪れた。聞き慣れた声がしたのだ。
「焔?」
「と、ナユちゃん。帰ってきたんだ!」
ゴミ捨て場で抱き合っていたようにも見える焔と少女に視線を落としたのは、悠未と灯理だった。
「北海道に、行ってたどう!」
何か、大事な存在と再会したように、瞳をキラキラとさせ始めて、少女は立ち上がる。その際、スカートが揺れて見えてしまったショーツは紺の縞々だ。
「え? こいつ、悠未と灯理さんの知り合い?」
悠未が頷いた。
「彼女が、四人目だ」
「日本人とスロヴェニア人のハーフなんだよ~」
とまどう焔をよそに、朗らかに仲間との再会を喜び合う悠未と灯理である。
「なんじゃ、こいつ、ユーミとアカリの知り合いか~」
くるりと焔を向き直ると、長いツインテールをなびかせてウィンク。文学的な少女性と、男性消費者に媚びる昨今の消費文明的アイドル感は半々くらい。
銀髪の天使はその名を名乗った。
「奈由歌じゃ。よろしく、少年!」
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一度壊れた街の片隅で。子供の頃に描いた幻想は劣勢な今日だとしても。
一人目は、日常の守り人。
二人目は、暗闇に寄り添う街灯り。
三人目は、オールマイティーの代役。
四人目は、全てを肯定する低スペック少女。
五人目は、忘れさられた燃える瞳の少年像。
まずはこの五人で。一緒に。
世界を救ったりはしない、物語が始まろうとしていた。
/第二章「この五人でGo!復活の未来」・了
第三章へ続く
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