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「何でもない」
真壁はこちらに来ない。その場で佇み、栄貴たちの様子を伺っている。
「コンビニに行きたい」
栄貴は、真壁に見せつけるように、雄太の肘に軽く触れた。
雄太が、え? と、驚いたように目を見開く。一拍してから、にやけた顔になる。
――お前なんか敵にもならないよ。
咄嗟に浮かんだ感情に、栄貴は驚愕した。これではまるで、真壁をライバル視しているみたいじゃないか。この自分が。
――冗談じゃない。俺はホモじゃない。冗談じゃない。
「真壁ってほんと、あからさまだよな」
「え? なにが?」
雄太がとぼけた声を出す。
「あいつ、お前のことが好きだよ。同じホモ同士で話も合うんじゃないの。外見はどう考えてもお前のタイプじゃないけどな」
酷いことを言っている自覚はあった。だが止まらなかった。
「あいつなら最後までヤらせてくれそうじゃん。俺は絶対無理だから。お前がどんなに頑張っても」
喉につかえているコールタールのような負の感情を、思うがままに吐き捨てる。
雄太の顔を見る。彼は傷ついたように唇を噛んでいた。栄貴と目が合う前に、彼が俯いた。
ごめん、と一言。言ったほうがいいのかもしれない。だが言えない。
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