秋のサナギ

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「サークルって何に入ってるんだ?」  さらに栄貴が尋ねると、雄太が不満げに眉を寄せた。 「何回か言っただろ。映画研究会だよ。たしかに最近サボってたな。今日は行くか」 「やった。じゃあ飲み会も来るよね?」  真壁はさっきから、雄太だけを見て話している。  胃がむかむかする。定食がフライものばかりだったからか。グラスに入ったお茶を一気に飲み干した。  栄貴は椅子から立ち上がり、楽しそうに談笑しているふたりに声をかけた。 「俺ちょっと買いたいものがあるから」  ふたりの反応を見ずに、栄貴は食堂の出口に向かった。  廊下に出て、近くの階段を下りようとしたとき、背後から呼び止める声がした。 「栄貴、待てよ。俺も買い物付き合う。おまえのパシリなんだから」  雄太が追いかけてきたことに安堵している自分がいる。話していた真壁を振り切って自分を追いかけてきたのだと。 「――真壁と仲良いんだな」  言うほどではない事なのに、言ってしまう。声は皮肉っぽくて冷たい。 「そうだなあ。あいつとは気が合うんだ。映画とか音楽とかで」 「他にも気が合うこと、あるんじゃないの」  栄貴の視線は、食堂の出入り口から急いで出てくる真壁に向いていた。 「他にもって」  雄太が怪訝な顔をする。     
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