秋のサナギ

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 栄貴は食べかけの食器を持って席を立った。真壁と顔を合わせているのが苦痛だった。  トレイの返却口で食器を戻したあと、栄貴はそのまま出口に向かった。 「あれ、栄貴。どこか行くのか」  トイレから戻って来た雄太に見つけられてしまった。 「顔色悪いけど、大丈夫?」  栄貴の頬に、雄太がそっと手を当てた。温かい手だ。一緒にいると、ちょっとした隙を突かれてよく触ってくる、ごつい手。でも、触れて来る頻度が前より少ない。  雄太が心配そうに眉を寄せて、自分のことを見つめてくれる。だけど栄貴は分かっている。この表情は自分以外にも見せるのだ。真壁にも。 「コンビニ行ってくる」 「そう。俺は食堂に戻るよ」  真壁がいるから。  雄太が口にしない言葉の続きを、栄貴は勝手に想像してしまう。  ――前はついて来たのに。一緒に行ったのに。 「今日サークルあるからさ、さきに帰ってて。後から行くから」  そう言って、雄太が食堂に向かって歩いて行く。  栄貴はほっとしていた。今日はアパートに来てくれるのだ。真壁が参加する飲み会には出ないで自分の部屋に。     
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