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翌日、何事もなかったように雄太は栄貴に接してくるので、栄貴もそれに倣った。
栄貴は割り切った。雄太に対し、変に情を持った自分がおかしかったのだ。彼を便利なパシリ、タダの家庭教師、フェラ手コキのマシーンだと思えば良い。そうすれば真壁と仲良くしていようが、ふたりで水族館に行こうが腹は立たない。
以前よりさらに、雄太がアパートを訪れる頻度が減った。時間を持て余すようになった栄貴は、自炊に力を入れるようになった。料理本を買って、一人じゃ食べきれない量の御馳走を作って、間食する。秋の旬の素材は、どれもこれも美味しい。きのこ、かぼちゃ、さつまいも――一度奮発して、マツタケを買った。松茸ご飯にしたらめちゃくちゃ美味しかった。果物も美味しい。デザートは栗を使ったケーキ系。
食べている間は、雄太が部屋に来ないときの時間を埋めることができた。寂しいと思う暇だってないのだ。
過食に走って二週間が経ったころ、やっと雄太が部屋に来てくれた。
「ちょっと――久しぶりだな」
玄関のドアを開けて、雄太を先に入らせる。
部屋のなかは食べ物で溢れかえっていた。ほとんどがスナック菓子や菓子パンだ。安さと手軽さを重視した結果だった。
だいぶ部屋は散らかっているが、ベッドだけは何も置いていない。
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