秋のサナギ

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ガタイも良い。半袖のTシャツから覗く腕は栄貴の一、五倍はありそうな太さだ。 遠目には見かけたことはあるような気がするが、話したことは一度もない。  栄貴の視線を感じたのか、男がぱっとこちらに顔を向けた。いきなり顔を崩して嬉しそうに話しかけられる。 「俺、松本雄太。今年の四月からここに編入したんだ。高専出身なんだ。よろしく」  捲し立てるように言われ、栄貴はちょっと引いた。席が隣になっただけで自己紹介してくるとは。変わっている。  自分も名乗るぐらいはした方がいいのか。面倒だな、と感じつつも「俺は」と口を開いたが、「相原くんだよね」と、男が先回りして言った。 「俺のこと、知ってるんだ?」  悪い意味で栄貴は有名だった。読モをやるぐらい顔とスタイルが良かったので、女にはモテまくっていたが、同性には受けが悪い。口が悪い、付き合いが悪い、性格が悪い、と悪い尽くしの悪評を賜っている。その通りなので仕方ないが。 「知ってるよ。初めて会ったとき、うわって思った」 「なんで?」  栄貴が問うと、雄太が体を寄せてきて、囁くように言った。 「理想のタイプなんだ。顔はもちろんだけど、身長とか、ちょっと痩せ気味なのとか」 「おい、それはおかしいぞ」     
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