秋のサナギ

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 言われて栄貴は、素直に頷いた。実際に太っていた。二週間、何も考えずに食べたいだけ食べた。ゆとりのあったジーンズのウエストがきつくなった。太腿のあたりもピチピチだ。顔もそうだ。二重顎になった。首も太くなった気がする。腕の肉も一センチぐらい摘める。 「俺がデブったから、勃たない?」 「そうじゃないけど――」 「太ったって俺は俺だろ? 顔がブサイクになるわけじゃないし。体だって今も健康体重だ。今までが痩せ気味だった。そうだろ?」  実際、服を着ていれば、太ったと気が付く人はあまりいない。 「そうなんだけど」  雄太は続きを言わなかった。悩むように頭に手を置いて動かない。  一分待った。二分待った。そうすると、やっと雄太が口を開いた。 「ごめん。もうパシリはできない」  雄太が苦しそうに細い息を吐いた。 「他に好きな人ができたんだ。実はその人と軽いデートはしてる。水族館とか、映画に行って」 「そう」  声は割と冷静だった。震えたりなんかしなかった。 「おまえさ、美人は飽きないって言ってなかった?」 「言ったけど――間違ってた。俺、最初は本当に、栄貴と一緒にいられるだけでよかった。だけど、どんどん見返りが欲しくなっていった。栄貴をイかせた後、自分で擦って出すの、虚しかった」  ぼそぼそと雄太が言う。 「あいつは――真壁はさ、俺と同じで男しか好きになれないんだ。だから、上手くやっていけると思う」 「一緒にいてもテンションは上がらないんだろ?」  意地の悪い突っ込みをする。     
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