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じゃあなんでこんなに喉が苦しいのだろう。目の奥が熱いのだろう。胸が痛いのだろう。
「雄太」
フェラしてくれる人がいなくなっただけ。ただの家教がいなくなっただけ。パシリがいなくなっただけ。それなのに、笑えない。ふつうに立ち上がれない。買い物に行けない。
「太ったからだろうな」
真壁の方に気持ちが傾いていたのは、前からだ。それでも今日ここに来てくれたのは、確かめたかったからだろう。
自分が太っていなかったら、まだ関係は続いたかもしれない。真壁を振ってくれたのかもしれない。
「あいつ、俺の外見しか」
そこまで言って、栄貴は目を閉じた。
――そうか、俺は……。
顔と体だけじゃなくて、内面も好きになってほしかった。
でも、好きになってもらえるほどの内面なんて、持ち合わせていなかった。
深呼吸をする。
素直に泣けてきた。
十二月に入り、寒い日が続いている。
栄貴は最近、早起きをしてジョギングをしている。
冷え症には運動が良いことは以前から知っていた。だけど面倒で行動に起こせていなかった。
今年はやってみようと思った。
近くの公園に行き、楕円形のランニングコースをマイペースで走る。吐く息が白い。
もう、公園の木々からは葉が落ちて、少し寂しい風景だ。
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