不相応な恋

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寿美代殿は挨拶すると、しずしずと出ていった。 嫌な予感がする。 兄様を問い詰めるため、表に出て、裏に回ろうとした。 (家に上がるより早い) そこで、また女。 危うく、ぶつかるところだった。 「失礼しました。急いでいたもので。」 俺が頭を下げても、女の方は頭は動かさず、着物を正して言った。 「いいえ、よいのです。私も慌てていたもので。」 目がつぶらで、鼻が少し丸い、童顔の女だった。 口につけた紅が野暮ったい。 野暮ったいと言えば、着物もだ。 いいもんに違いないが、なんだか似合っていない。 (はなだ)色の地味な着物だった。派手な顔には不釣り合いだ。 目の前の女が誰なのか、ここまでで察したが、いきなり問い詰めるのも無礼なので、一応尋ねた。 「私はこの家の者ですが、何ぞ、こちらにご用でしょうか?」 「今、新吉様はいらっしゃいますか?」 やはり、山内様の御内儀か。俺より年下ではないだろうか。 そこへ、兄様がのこのこ出てきた。 「菊様ではございませんか!あれ?先の声は?」 こんなところに現れるはずのない女に、兄様は軽く驚いていた。 「新吉様!大変にございます!旦那様に私達の関係がバレてしまいました!」 「なんだって?!」 予想もしないことだったようで、兄様は狼狽していた。
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