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タツオはススキの銀の穂があちこちで揺れる演習場を眺めた。目標の正午まではあと1時間とすこし。できることなら、これ以上の負傷者や戦死者を出さずにこの訓練を終えたいが、敵である先輩たちも容赦なく攻めてくるはずだ。負ければむこうにはこちらとは比較にならない厳しい罰が待っている。
「先頭は王将とジャクヤ、それにテル。ついで、逆島少佐とぼく。サイコはここで援護を頼む」
「了解」
サイコが冷ややかな返事をした。テルがあきれたようにいう。
「今回の訓練で一番たくさん敵を倒したのはサイコだな。動けなくてもこれだけやるんだから、たいしたもんだ」
サイコは返事をしなかったが、目の下をほんのわずか赤くした。内心ではうれしいのだろう。
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