29(承前)

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「さあ、いくぞ。王将走れ」  蹴りだされるように4足歩行のロボットが走りだした。まばらにススキが生える斜面を最初の味方陣地に向けて、ジャクヤを乗せて駆けていく。斜面の上からクニが援護射撃を行っていた。サイコの狙撃は間隔をおいて、正確に敵の動きを止めていく。  テルは王将から遅れて、低い姿勢で駆けていく。周囲には多くの敵の銃弾がばら撒かれていたが、不思議と背筋をまっすぐに伸ばしたテルを避けていくようだった。戦場の不思議のひとついだが、銃弾を恐れない者にはなぜか弾は当たりにくいようなのだ。もちろん絶対とはいえないのだが。  テルが最後に味方の陣に身を投げだすのを確認してタツオはいった。 「つぎは兄さんとぼくだ。サイコ、頼むぞ。5…4…3…2…1…走れ!」
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