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何と言うか、壁一面が広く、真っ白な空間がただそこにあるだけの世界。僕は死んだのだろうか、結局魔法使いには成れなかったのか、思わず落胆とする。と見覚えのある少女が、此方の顔を覗き込みながらこほんと咳払いをした。
『あー、君は死にました。分かるよね?でもさ、魔法使いにはなれるかもよ』
「っ、海月って子が来なかった?」
『……有栖川海月だね、彼女ならもう居ないよ。何でかな、魔界側に行っちゃったんだよね。そこでだ、君が魔法使いになってあの子を救ってあげて欲しい』
「っ、僕まで魔界側に?あの、何か保険。と言うか能力はどんなのが付けられますかね……」
歳上だったと分かると、瞬時に敬語になってしまった。すると彼女は優しげな笑顔を浮かべながら答える、思うだけでなんでも給付出来る能力をあげようと、つまりはチート的なあれだ。しかし、魔界とか何故海月はそんな場所に向かったのだろう。
恐らく目の前の綺麗な女性は、神様だろうし、察するに神話で言う天界は此所を指しているに違いない。そう思案した所で、はっとしたままに彼女にある事を訊ねる、途端に神様は首を傾げて言った。君が死んだ事、まだ誰も気づいてないよと。
だが、彼女は軈て渋々と告げ足すように言葉を紡ぐ。最悪、鳥の餌だけどと、さらりと怖い事を言い退ける神様に僕は思わず呆然とした。 その顔を見てか、愉快そうにけらけら笑う彼女は何だか腹黒くも思えるのだが。
『んー?腹黒く無いって。私は皆の女神様だぞ、って無視しないでよ……』
何か泣き出したが、僕はただぼーっとしてただけだ、意外に構ってちゃんらしい。少しからかいたくなる、そしてこの美貌は小学生の自分でも可愛いと思えてしまう程に超絶美人だった。と言うか何故か、思考が大人びているのだが。
『あっ、言い忘れてたけど、有栖川海月と。月人、君達は十五歳って年齢で転生されるから。宜しく、きゃっ。な、何してるの……!』
「ふわふわ、もふもふしちゃえ!」
翼人を見るのは初めてだ、しかし何だろう不思議と羽に触れてみたくなった。其から僕は暫し悪戯を堪能した所で、彼女に後で聞かされた事だが、天使や天界の種族の翼は男が気軽に触れては駄目だったらしい。
『はぁっ、はぁっ、分かった?』
「ご、ごめんなさい!」
『仕方無いわね、私も連れて行きなさい。翼人の羽は神聖な物、それを触れたのだから契約したも同然ね』
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