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「良かったねー。さすがって感じだった。」
「ですよねー。ボーカルの人、堂々としてて格好良かったなぁ。」
「ドラムが圧巻だった。迫力が違う。」
「分かります分かります。」
ライブが終わり帰路につき、私の口はペラペラと「軽音一筋な後輩」を演じる。
ボーカルの人は本当に格好良かった。ドラムの迫力だって全く気圧されなかったわけじゃない。
でも、隣にはずっと先輩が居たんだもの。「軽音一筋」でなんて居られなかったの。
それが悪いことなら、私は悪い子でいい。
一通り喋った「軽音一筋な後輩」が大人しくなったので、すっかり暗くなってしまった窓の外をぼんやり見つめ、しばし電車に揺られてみる。
次は羽衣。アナウンスにつられて路線図に目をやって、思わず顔をしかめた。
ああ、なんで同じ急行列車なのに帰りの電車ってやたら速いんだろう。行きはあんなにのんびりなくせに。
先輩、羽衣で普通車に乗り換えませんか。少しくらいこの時間、続けちゃダメですか。
口に出せるわけもなく、電車は私たちを引き離すべく進んでいく。
「・・・先輩。」
今日の私、可愛かったですか?
先輩って今、好きな人とか居ますか?
好きなタイプってどんな人ですか?
私なんかどうですか?
もう少し、隣にいたいんですけど、ダメですか?
どれも声にならずに逃げていった息は、不思議そうな顔をする先輩の目に、すぅっと吸い込まれた。
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