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あ、やだ。
「じゃあ、お疲れ。気をつけて帰るんだよ。」
やだ。
引き止める術なんて持ってない。引き止めたって仕方ない。先輩も家に帰らなきゃなんだし。
明日サークル練で会えるし。
別に今日、何かを進めなくても、誰も何も困らないし。
焦らずゆっくり、意識してもらった方が絶対いいし。
でも。
「せんぱい、」
電車の速度が落ちる。
先輩が一歩扉に近づく。
扉が開いて、また足を出して、
「ねぇ、あのさ。」
くるり。
「甘いもの食べに行く話、俺でもいいんだって、自惚れてもいい?」
初めて見る好きな人の顔は、すぐに扉に隠された。
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