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燿馬にはこれといった友達がいない。
あいつは一人でいるか、恵鈴と遊んでいるかの二択しかないヤツだ。
今、恵鈴は家で夏鈴と夕飯を作っている。恵鈴は極度に視力が悪いから、暗くなった外になんか出せない。薄い色素の瞳が透き通ったガラス玉のようで美しいけど、実用性に欠けた目は生まれつきで、そんなハンデがあるって気付いた時は正直これ以上ないほどに落ち込んだ。
だけど、燿馬が珍しく口を開いた。
「俺が、恵鈴の目になる」と・・・。
そんなカッコいいことをぬかしておいて、週に一度は俺が探しに行くまで帰宅しない神経を疑うよ。
どこかに秘密基地でも隠してやがるんじゃないだろうな?
国道沿いを駆け足で進み、あられに叩きつけられながらやってきた大橋の真ん中に子供のシルエットが見えた。間違いなく、俺の子だ。
駆け寄っていくけど、橋の上ってことでより強い風が吹きつけていたせいで、着ている上着も手に持っていたジャケットもピンと張った帆船のように身体を持って行こうとした。踏ん張って、ガードレールに掴まりながら歩いてやっとたどり着くと、燿馬が歩道で三角座りのまま俺を見上げた。
「なんでまたこんなところに居るんだよ?!ママに心配かけちゃダメだろ!!」
「・・・・・」
明らかに強風のせいで身動き取れなくなってたくせに、涙目になるどころか落ち着いた眼差しを俺に向けて無言・・・。何を考えているのかさっぱりわからない。それが燿馬だ。
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