いまわのきわ

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 そうそう、きっと妹の可南子も、お父様のことを尊敬していることでしょう。あら、ごめんなさい、お父様。そんな悲しそうなお顔をなさらないでください。お芝居はやめましょう?お父様。  だって、お父様は、可南子を生まれてすぐに、土蔵に閉じ込められたんですものね。乳母に世話をさせて、家族を一切、あの土蔵に寄せ付けないようにしたんですもの。いいえ、決して責めているわけじゃありませんよ?  仕方ないですよ。一族の間で、双子が生まれることは、決してあってはならないことですものね。不吉な前触れとして忌み嫌われておられたのも知っております。  私達の一族の能力は、一子相伝。何のことだと、もしお父様がおしゃべりになられるのでしたら、そう言うのでしょうね。今まさにそんなお顔をされておられます。声帯がもう無いので、そうやって寝床で呻くことしかできませんものね。  おかゆが冷めたようですわ。お食べになられます?ああ、お話の続きが気になるのですね?お父様の、そんなお顔を拝見できるなんて、最高ですわ。もっとお父様を驚かせる話があるんですよ?お聞きになりたい?     
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