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いまわのきわ
おはようございます。お父様。今日は良い天気ですよ。少し窓を開けて空気を入れ替えましょうね。
あら、庭の金木犀がもう香る時期になったのねえ。お父様にも届いているかしら。お父様に、窓からあの見事な咲きっぷりの金木犀の花をご覧いただけないのが本当に残念ですわ。
今日は柔らかく焚いた、おかゆに栗を少し入れてみましたわ。お口に合えば良いのですが。栗と言えば、秋の味覚ですものね。お父様がお元気になられたら、さんまや茄子もお料理して差し上げるのですが。残念ですわ。
お父様がおしゃべりになられなくなって、もうしばらく経ちますわね。お元気な頃は、不動産業をワンマン経営でならしてこられたのに、よもや病気でこんな姿になられることを誰が想像したでしょうね。
寒村の地主から、不動産王にまでのし上がったやり手ブローカーと呼ばれ、容赦ない地上げのやり口にはさんざん非難の声がありましたけど、私は、ここまで育てていただいたお父様は立派な方だと思って尊敬申し上げております。
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