第3話※

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 「よくねーよ。俺さ今年度から課長になっちゃってさあ。もう大変だよ、仕事が出来すぎちゃって」 「……それで?」 「昇進祝いしてくれるって、父さんと母さんが。お前も来ていいよ」    軽蔑の笑みが顔中に広がっていく。  昇進祝いだと?  親父の会社で楽な仕事ばかりしているくせに。  「ちょっと先だけど、五月の頭、Tホテルのフレンチレストランだ。必ず来いよ」  嫌だ。しかし言葉は出ない。 「慎次ぃ。お前がいないとつまんねえよ。からかう相手がいなくてさ」 「いなくたって、相手ならいくらでもいるだろ」 「駄目、駄目。慎次じゃなきゃ。お前をいじめるのがストレス解消なんだよ」  スマートフォンの向こうで高らかに笑う声が鼓膜に突き刺さる。  ちくしょう。  唇を噛んだ。  「一人暮らしなんか止めて早く帰って来いよお、慎次。母さんも心配してるよお」    怒りを抑える為に拳を握りしめた。  義母が心配しているだと?  あり得ない。    慎次は高松商事の社長である父と、その愛人の子供だ。慎次を養子にして手放す代わりに慰謝料を貰って、本当の母は姿をくらましてしまった。  だから義母は憎むことはあっても、心配なんてするはずがない。  
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