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少し寝るか、と目を閉じようとするとスマートフォンが振動した。
高松圭一(たかまつけいいち)からの電話だった。
胸に嫌なもやが広がっていく。
義理の兄であるその名前を見るだけで手足が冷たくなってくる。
無視しておこうと思ったが、いつまでもスマートフォンは震え続けている。
舌打ちをしてデッキへ出た。嫌々ながら通話に切り替えると、甲高い圭一の声が飛び込んでくる。
「出るの遅いじゃん。何してたんだよ」
圭一が言った。どこか賑やかな場所にいるようで、軽快な音楽が流れていた。女のはしゃいだ声もそれに混じる。
「別に」
「んもう。おにいちゃんに対して相変わらず冷てえなあ。今どこだよ」
「どこでもいいだろ」
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