ソングライター的夢の叶え方

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「好きのパワーを舐めてはいけない。人間は、好きなものや事柄に関しては、考えられない力を発揮するものなのだ。そしてそれは、困難などをたちまち蹴散らしてしまう」  もうひとつ教えよう、と彼はもう一本指を立てる。 「人生とは、思ったより、甘い」  彼はそう言うと、上体を起こして、またパソコンに向き直ってしまった。 「意外となんとかなってしまうものだ。案ずるより産むがやすしと言うじゃないか。僕の仕事も、儲からないわりに、生活はそれなりになんとかなってしまっている」  普段、ありえないくらいにネガティブな彼の、意外に楽天的な側面を目の当たりにして、わたしは面食らっていた。  だけど、一方で感心してもいた。  彼が答えてくれたことは、すべてわたしが知りたかったこと。  口にしていないことまで、どうやって読み取ったのかと驚くほかない。 「その口ぶりだと、君には何かやりたいことがあるのだな。良いことだ。好きなら突き進めばいいじゃないか。案ずることはない。案外なんとかなってしまうものだ。夢とはそうやって叶えるものなのだ。叶えることができなかった夢ほど、悲しく意味のないものはない」 「……押忍」  ソファーに寝転がった状態で、思わず胸の前でこぶしを握ってしまった。  そして、心の氷がほろほろと解けていくのを感じる。
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