彼はいつも悩んでいる

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 わたしの手の中で、少しずつ、少しずつ、その温もりは冷めていった。  生きものが、命の終焉を迎え、その(ともしび)を失っていくようである。  あまりいい気分はしない。  目の前には、眼光鋭い男がいる。  パッと見には、年齢がよく分からない風貌をしている。  もう何十年も第一線で活躍する、若作りの映画俳優のようにも見えるし、ついこの間に教習課程を終えたばかりの、新任高校教師のようにも見える。  簡素な木製のデスクから身体をそむけ、顎の下にこぶしをつけたまま、もう長いことかかげ上げられたままのわたしの両手を、彼は眼球だけを動かして交互ににらみつけている。  先程から、ずっとこの調子だ。 「ねぇえ、先生、まだぁ~?」  いいかげんしびれを切らしてせっつくと、ピシャリとたしなめられた。 「(とより)、いい選択をするためには、時間を惜しんではいけない」 「場合によるじゃん。せっかくおいしそうなホットドッグのキッチンカーと会ったから買ってきたのに、もう冷たくなっちゃったよぉ」 「あらびきとハーブ入りフランクの二種類を購入してきた響が悪いのだ」 「だって、どっちもおいしそうだったし、先生がどっちを好きなのか分からなかったしさぁ」
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