In My Time of Dying

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11月になってオレンジのカボチャが姿を消すと、町はクリスマス一色。 駅ビルで買ったばかりの雪の結晶のオーナメントを、顔の前で揺らす。 街灯のオレンジの明かりに、白いビーズが光って 本物の雪みたいだと思う。 駅の近くにある駐車場まで歩きながら 灰色の冬空に白い息を吐く。 1月のセンター試験まで、2カ月と少し。 先週返ってきた模試の結果は、C判定のまま。 B判定まで上がったら、また俺の家でデートする約束を必死に取り付けたのに。 今回も手が届かなかった。 受験も恋愛も、完全に低迷中。 初めてキスした夏祭りから3カ月。 あれから何回キスしても、 俺が顔を近付けるたびに凛は体を硬くする。 はじめは、毎回初めてみたいに緊張する凛が可愛くて 恐がらせないように、 今以上に暴走しないように 自分をコントロールするだけで精一杯だったけど。 もしかしたら、凛は 無理して俺を受け入れてるんじゃないかって 最近すげぇ不安になる。 10月に入った辺りから 屋上に行くこともなくなった。 山のてっぺんにある病院の屋上に吹く風は 確かに真冬並みに冷たい。 受験生だから、体を大事にしなくちゃって 気遣うように凛は言うけど。 ほんとはそれだけじゃなくて、 俺と2人だけになるのを避けてるんじゃないか。 そんなことまで考える。 そんな俺の女々しい猜疑心が 昨日、凛を泣かせた。
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