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今日はそんなことを話に来たんじゃないと目で訴えると、宗次郎も深呼吸をしてその話を止めてくれた。
凜乃だって追求したい。
でも、それは無駄だとすぐに分かった。
会ってそうそうに謝罪もなく、それどころか凜乃を卑下するようなことばかりを言いだすのだから。
(家柄だって、顔だって、大学だって、私は普通ですけど……)
不意に、持ってきた指輪を思い出す。
実父から、高瀬家の子供として認められたことを、今こそ話す時だと宗次郎にそっと小箱を渡した。
こんなことをしないと理解し合えないのは悲しいが、ここまで用意したのだからと、凜乃も決意して宗次郎を見つめる。
宗次郎も小箱を手にすると、そっと中から指輪を取り出した。
出て来たプラチナの指輪に、宗次郎の母が苦笑いする。
「安物の指輪っ」
「違うよ、母さん。これは、凜乃のお母さんと高瀬家の当主が本当に愛し合っていた証拠だよ。刻印と、それから、本人にも全て話を聞いてきた」
宗次郎がそっと刻印が見えるように両親に見せる。
「これは、真実の愛ってことよね?」
「そうだな。あの時も、噂じゃ奥さんよりも真美子さんを選んでいたって……」
宗次郎の父がぼやくと、母親がきつく睨んだ。
すると黙り込んでしまい、俯いてしまう。
しかし、宗次郎は続ける。
「これは証なだけだよ。この前、高瀬家に行って、凜乃を高瀬家の子として認知して欲しいと言ったら、当主は認めてくれた。凜乃は高瀬家の血を引いていることになる」
宗次郎がそう言うと、両親の顔色が悪くなり母親に至っては頭を抑え込んでいる。
「正式な書類が必要なら、ここにある」
凜乃の戸籍を差し出すと、宗次郎の母はまじまじと見つめて深いため息を吐いた。
同時に、頭をまた抑えて宗次郎に言う。
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