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少年は礼儀正しく挨拶をしたかと思うと、なんともいえない面持ちでベッドの傍らのパイプ椅子に腰を下ろした。
「どうしたんだい?」
数秒の時差と共に少年は話始めた。
「お母さんが救外で・・・今日から入院するんだって」
「そうか、そうか・・・君もお兄ちゃんになるんだね」
そう言って頭を優しく撫でると、これまたか細い声で少年は呟いた。
「ぼく、お兄ちゃんになれるかな・・・?」
急な言葉に少し驚いたが、そうか、この子も不安なのかなんて察してみたものの、
どうしてそう思うの?と言ってみた。
「だって、ぼくピーマン食べられないし、夜一人じゃ眠れないし、トイレだってお母さんがいないと怖いもん・・・こんなんじゃ弟に笑われちゃう」
「そうか・・・ピーマンは苦いもんなぁ、夜も一人は怖いよな」
「おじいちゃんもわかるの?」
目を丸くし驚く少年の頭をもう一度撫でた。
「あぁ、分かるとも」
「ねぇ、またあのお話し聞かせて?」
「あぁ、良いよ」
「やった!」
少年は目を輝かせながら私の話に耳を澄ませた。
「いいかい?この話は君にとって人生の一ページにも満たないだろう。長く感じてもきっと一ページの三行にしかならないだろう。でもね、たった三行でも本には……人生には大切な三行なんだ」
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