第一章「深い眠りについた夜に」

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 それともただ単に言いたくないのか。頭の中で様々な疑問が浮かび、けれど、そのどれもが明確な理由としては乏しいものだった。そうこうしているうちに車はトンネルへとさしかかろうとしていた。  どのくらい乗っていたのだろう気付けば見慣れない景色になっていた。車はついにトンネルにさしかかり、さきほどまでの走行中の車の音は途端にくぐもった音へと変わった。  トンネルは終わりにさしかかり僕は興味本意で車の窓を自分の鼻くらいの位置まで開けた。  そしてトンネルを抜けた時、太陽の日で眩しく目をつむってしまったものの、かすかに潮の香りが風と共に鼻を擽った。  そうして目を微かにこじ開け、かすむ目に真っ先に映ったのは青く澄み渡った海だった。トンネルに入る前には姿も匂いさえもなかったにもかかわらず、トンネルを抜けた途端見えた海に正直困惑していた。  海ばかりに気をとられていたせいか不意に我に返った時、何か違和感を感じた。それは紛れもなく目に見える違和感だった。海とは違う方角にそれはあった。  それは、見渡す限りの真っ白い建物ばかりの街だった。まるで雪が降ったのではないかと思わせるほどの異様な光景にゴクリと息をのんだ。幼ながらに夢でも見ているのではないのかと自分の目を疑った。形だけを見ればどの建物かはわかるものの白過ぎて驚きのあまり頭が上手く回らなかった。 「母さん、ここはどこなの?」     
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