おかえりと君は

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   冷たい雨の中を歩く。  佳作か、と思った。虚しい気持ちに襲われていた。  歩きながらSNSを開いた。佳作に入った自分の小説のタイトルを検索する。検索結果は二件で、どちらも小説の内容を褒めるコメントだった。  ついでに『一ノ瀬怜』でも検索してみたが、結果は入賞前と変わらなかった。自分のアカウントの友達申請数も、ブログの閲覧数も大した伸びは無い。まあ、こんなもんだろうと思う。  佳作に入っても、知名度は上がらない。  ……もっと頑張らないと。 「ただいま」  誰もいないことは分かっていたが、私は玄関で呟いた。  カチリ、と鍵を閉める。この瞬間に母や家政婦さんには私が帰宅したことがメールで伝わるらしい。過保護なシステムだと思う。  リビングに行くと、机の上にラップに包まれた夕食が置かれていた。  まだ温かい。レンジで温めることもできるのに、私の帰宅に合わせて作っておいてくれたのだろう。いつもはもっと早くに帰っているはずなのに、高い賃金を払っているだけあって家政婦さんはとても親切だ。  私はお皿を持って自室へと向かうと、ベッドのサイドテーブルにそれを置きごろんと寝転がった。  一人の夕食には慣れっこだが、それでも好きにはなれない。  とはいえ母がいたところで楽しい食事になるとも思えなかったが。  
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