チェック柄

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チェック柄

 チェック柄がとにかく好きな友達がいる。  服や持ち物のどこかに必ずチェク柄が使われていて、本人もチェックが大好きだと公言していた。  でも、チェック柄の品を身につける本当の理由が別にあることを最近知った。  その日の友達は、服ではなく、持っている鞄がチェック柄だった。  私の家に遊びに来ているのに、鞄をずっと膝に置いたまま離さない。  邪魔じゃないのかなと思いつつも、指摘するようなことではないのでそのままにしていたら、何かの弾みで友達の鞄が膝から落ちた。  その直後、慌てて鞄を拾おうとした友達の顔に、奇妙な痣が広がったのがはっきりと見えた。  赤黒いそれは、やたらと爪と指が長い人の手のように見えた。 「…見た?」  問われて反射的にうなずくと、友達は心底困ったような顔をした。その後で『誰にも言わないで』と言う。  こんな様子の友達は初めてで、もちろん誰かに言う気はなかったが、せめて理由をと尋ねると、友達はしばらく迷った顔をしていたが、重々しく口を開いた。  痣が初めて浮かび上がったのは中学の時だが、どうしてこんなものが浮かび上がってくるのか、その理由は友達にも判らないらしい。ただ、痣のせいでろくに外出もできず、どうにか消せないかと躍起になっていたら、十字架を身につけると痣が出なくなることが判明した。だからペンダントの十字架を肌身離さず持っていたのだが、暫く経つとまた痣が出るようになってしまった。でも、もしかしらたと思い、今度はペンダントではなくブローチ型の十字架を身につけたらまた痣が消えた。そんなことを繰り返している内に、チェック柄でも十字架と同じ効果があることを発見し、同じ品をずっとつけていると効果がなくなるから、ローテーションで十字架とチェック柄の衣服や小物を身につけている、とのことだった。 「私、本当はそこまでチェック柄は好きじゃないのよね。でも他に痣が浮き出ないようにする方法がなくて、チェックだらけでもう大変」  そう言って友達は力なく笑った。  好みじゃない品を四六時中身につけてるなんて大変すぎる。でもそれしか方法がないなら、今度の誕生日は、せめて気に入ってもらえるようなチェック柄のプレゼントを贈ろうと思う。 チェック柄…完
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