11・その命を救うもの《前編》

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エドワードに案内され、カラは彼の家に足を踏み入れる。 昨日ぶりのエドワードの家は、相変わらず本と人形に埋もれていた。壁も見えないようなその惨状に呆れながらも、突き刺さる人形の視線に気が重くなる。 カラは人形が嫌いだ。人形のくせに人形を嫌うなどおかしな話かもしれないが、同じ人形だからこそ彼らの目が気になるのだ。お前らだけ命を与えられやがってと恨みがましげな視線を送られるようで、あまり気分の良いものではない。ハイジあたりが聞けば、物であることに変わりはないだろうとカラの自意識過剰さを笑ったことだろう。そんなだから、エドワードの家はカラにとって居心地の悪い場所だった。 「さあどうぞ、座って」 エドワードに促され、カラは落ち着かないまま座り込む。カラの心情とは裏腹にエドワードはご機嫌で、その浮かれ具合が気に障ったカラは嫌味の一つでも言ってやろうと口を開く。 「俺と話し足りないとは、随分と人恋しいようだな。アンタは人嫌いだと聞いていたが」 カラの嫌味にも笑顔を崩さず、エドワードはあっけらかんと言い放つ。 「そりゃそうだよ、君は人じゃなくて物だからね」 無邪気な言葉に不意をつかれたのはカラの方だった。至極当然のように吐き出されたそれに目を見開いて、それから苦々しさに顔を顰める。ああそうだ、エドワードの言う通りカラは人間ではなくて物である。嫌う理由さえ無いということだ。そんなことは当たり前のことだというのに、すっかりカラの頭から抜け落ちてしまっていた。 あいつのせいだ、とカラは思う。イヴと一緒に過ごしてたせいで毒されたのだろう。あの子供は、いつも人間のようにカラ達に接するから。そのことに思い当たり、カラは不快さにますます眉を寄せた。
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