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「……嘘だろ……?」
意識を混濁から急により戻したせいで頭がいたい。必死で目をさまし、自分の枕元にあるスマホを見て、呆然とした。……すでに日が変わっている。丸一日寝ていたとでもいうのだろうか。
だるい体を起こし、家の中を探してもミタマはいない。ふわふらしながらも携帯の履歴を見ると、会社に休みの連絡を勝手にしているのだけはわかった。
(あいつ……どこに行きやがった……!)
今日は新月だ。そのことにハッと気づいた瞬間、周りの空気が一変した。ぞくりと嫌な予感がして、時計の秒針を見る。時間が止まっていた。違う世界に入った感覚に、操は思わず唾を飲み込む。ミタマもいないのに、この時間に入ってしまうなんて。言い知れぬ不安と、彼への心配で胸の奥がいたむ。
「っ……!」
途端、インターホンが鳴った。まさかの事態に心臓が跳ねた。恐る恐る玄関前のモニターをつけると……そこにいた人物に思わず声が出る。
「っ!?輔さん!?」
自分の家の玄関前にいたのは輔だった。慌てて扉を開けて迎えにいくと、輔は遅れちゃったね、と苦笑いをこぼして、時計を見せた。彼の時計の秒針もびくびく震えたまま、先には進まない。
「輔さん、なんで……うっ……」
「君のことを頼まれた。体は平気?」
平気じゃないよね、と眉をひそめた輔に、操は頭をおさえながら呻く。
「……ミタマは、あいつはどこにいるんですか」
「ちょっと別の用があってね。飛ぶから掴まって」
揺れるよ、といった輔は操の体をひょいと抱え上げると、マンションの廊下から外に飛び出す。夜の街を飛びあがっていく感覚に、ぐらりと体も脳も揺れた。しかし、必死で街を見ると、遠くの公園のあたりに黒い霞が見えた。
今日はあそこか、と思ったのに、頭痛にやられて目を閉じている連れて行かれたのは駅前のホテルだった。連れて行かれたホテルの一室で出迎えたのは大輝だ。
「輔、遅い」
「ごめん。時間が変わってしまった」
「だから、早く行けっていったのに」
呆れたように腕を組んで壁にもたれている大輝は昼とはまた違った様相を見せていた。部屋の中に通されると、そこには誰もおらず、小綺麗なジュニアスイートだった。
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