第8話

6/14
2550人が本棚に入れています
本棚に追加
/124ページ
「……あの……、ミタマは……」 「ここには居ない」 「!?今日、あいつは試験の最終日なんでしょう!?俺がいないと……」 「そう、だから」  君をここに止めなくちゃいけない、そう言われて、部屋の四隅にキラリと光る石があることに気づく。部屋全体が薄い光に包まれた。自分が閉じ込められたのだと気づいた時には遅かった。 「……っ、輔さん!?」 「ミタマに頼まれててね。鎮静剤の効き目についてちゃんと言ったのに、あいつ、一日前に打っちゃったから。さすがに連続で打つのはよくないし、このホテルは俺からのサービス。君の家のあたり、危ないから」 「っ、輔さっ……」  おい、と声をかけた大輝も事情はわかっているのだろう。後ろめたさからか、操には視線を向けず、いくぞ、と輔に声をかける。 「昨日のうちにあらかた処理したけど、俺たちも新宿戻らねえと」  大輝との会話で、自分が完全に閉じ込められたのだと気づく。慌ててその「膜」の外に出ようとしたが、薄い壁があって開きそうにない。思い切り殴りつけても、何か……透明な壁のようなものに阻まれて、バチンっと音がなる。くそっ、と思わず出た言葉に輔がすまなそうに笑って部屋を出て行こうとした。 「騙してごめんね、操くん」 「あんた、それでいいのかよ!?ミタマ、消えちまうんだぞ!」  ぴたっと止まった輔は少し考え込んだ。それに気づいた大輝が、決めたんだろ、と舌打ちをして、その腕を引こうとする。 「おい、輔。いくぞ」 「ごめん、ちょっと隣の部屋にいてもらってもいいかな?」 「……五分またねえぞ。俺は俺の街が気になる」 「そんなにかからない」  ふっと笑った輔は、大輝を扉の向こうへやると、操に向き合った。その表情は相変わらずで、けれど、いつも以上に感情がよめなかった。操は、今の状況がわからないながらも、必死で問いかける。見えない壁を殴りつける拳が赤く腫れたが、そんなことに構っていられなかった。
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!